2016年10月8日土曜日

BMJ掲載質的研究ガイドライン"COREQ"について


医療系大学院に移って質的研究を教え始めて3年目。少しずつ分かってきたことがある。

それはどんな方法使ったの?―現象学?グラウンデッド?エスノグラフィー?
その結果の妥当性は?
客観性は担保できるの?

質的研究に親しんでいる人文・社会科学者だったら、たぶんすっ飛ばしている質問の数々がとにかくなされる。

私からすると、「なんか立派な方法論使って、難しい用語使ってきれいにまとまったように見えるけど、結果でそんな当たり前のこといって、そもそも研究の意味があるのでしょうか?」と突っ込みたいことも多いんだけど、方法がきれいに出されていると認められちゃう研究もあって、いったいどこに評価基準を置けばよいか混乱することも多い。

とくに客観性を連呼されると、「あなた、どこかにそんな立派な『客観性』が存在していると思ってるんですか?」とか言いたくなるけど、そこは言わずに我慢する。

私は統計がものすごく客観的な方法だとは思ってない。ただ、どういう方法と結果であれば「客観性、信頼性があると認めるか」という共通合意はきちんと出来あがっている。

ただ質的研究の場合は、どうやったらその結果に信頼性があるのかについての共通合意がない。だから突っ込まれやすい。


わかんないと眠くなるよね。

そこで今年は、権威ある雑誌であるBMJに掲載された「COREQ」というガイドラインを授業で紹介してみた。選出された22の質的研究およびガイドラインに関する研究から、方法論として共通して出てくるアイテムを32個抜き出したもの。

これを使えばよい質的研究ができるわけではなけれど、とりあえず方法論への終わりなきツッコミはかなり避けられるのではないかと思う。さらにアイテムを一つずつチェックしていくと、自分の研究デザインのどこが強くて、弱いかがわかるのもよい。


COREQは3つのステージに研究デザインの段階を分けて質的研究のプロセスを整理しているんだけど、すべてのステージで言われていることは、決まったやり方があるわけではなく、またデータを解釈する以上研究者の主観が入るのは避けられないのだから、その分、研究のプロセスの透明性を保ちましょうということ。計算式に入れるわけにいかないんだからそうするしかないよね、と思う。

そしていつもこういうの見ていて思うのは、「医療系の研究って人間の「主観」をとことん信頼していないし、もはや悪しきものと思っていませんか?」ってこと。人間じゃないもの―SPSSとか―にいれるとなぜ突然信頼できるものに変わるんだろうか。

人間はそんなにだめなのか?

うーん―


だめかも…(笑)



とにかく言いたいことはCOREQはデザインの上で使う価値があるってことです。

COREQは下記からダウンロードできます。

http://m.intqhc.oxfordjournals.org/content/19/6/349.full.pdf