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2018年2月19日月曜日

『人工知能の哲学』松田雄馬

本が面白いかどうかは、その本がどんな「問い」を立てているかに尽きると思う。
松田雄馬さん著『人工知能の哲学』はまさに問いが面白い。

著者はドラえもん好きらしい。

情報工学の専門家として、さまざまな最新技術にふれ、「人工知能」や「AI」がバスワードのようにネットにあふれる中で、「そもそも知能とは何か?」と本書は問う。

情報工学の歴史を紐解き、人が人の知能とどのようなものと捉えてきたのかが分かりやすい例と共に解説される展開がスリリング。

あと生命という自分の専門外の分野に果敢に突き進み、そこから情報工学が達成した知能、達成できていない知能を考察しているところも面白い。

ただ一方でもう少し言及が欲しかったのが、「意味」についての部分。最後の最後でふれられてはいるが、他の部分ほどの掘り下げはない。

おそらく人文・社会学の研究者であれば、本著が人間の外側にある【客観世界】を自明のものとして想定しているように見えるところが引っかかるのではないだろうか。

文化人類学者の私から見ると知能は人間の中にあるのではなく、世界と個人の間にあるもののような気がする。この辺り、松田さんにぜひ直接聞いてみたい。
 


2016年2月3日水曜日

ライザップとか、峯岸さんとか、若い女性のやせすぎとか。


15日に公開されたダイエットジム「ライザップ」の新CM。今回出演しているAKB48の峯岸みなみ(23)のスタイリッシュな姿が反響を呼んでいる。体重は48.6キロから43.7キロに減少したという。(“結果にコミット”した峯岸みなみ 気になるBMI値は?  日刊ゲンダイ 1月16日(土)9時26分配信 )

 

記事にもあるようにプログラム後、峯岸さんの体重は158cm、43.7kgにまで減少。BMI値は17.5となり、これは「やせすぎ」の区分に入る。


日本では若年女性のやせすぎが10年前から問題になっており、最近の統計のよると30代の女性のやせまで増加している。

若年女性のやせ過ぎに関しては、出産時に低体重児が生まれる可能性とか、その赤ちゃんが女の子の場合妊娠糖尿病になる危険性とか、将来介護度が上がるリスクとか、いろいろな懸念が医学界から示されている。去年の6月に一緒に一緒にテレビに出た医師の福島先生は「国家が滅びる」とまで言っていた。

私もこういう視点は大事だと思うし、知っておかなければいけないと思う。

でも若い女性の将来とか、国の将来とかの懸念の中で忘れられがちなのは、若い女性のいまここじゃないだろうか。そこを見ないと何も変わらないのではないだろうか。

「あなたの身体はもっとよくなる」
「あなたはもっときれいになれる」

これはひっくり返すと「あなたのいまの身体は十分じゃない」という意味である。身体が少しふっくらしてくる年頃にそんなメッセージを浴び続けるのである。中年男性がやせようかなと思うのとは次元が違う。

自分のそのままの身体を受け入れることを許さない社会の中で若い女性は生きている。

その部分を変えようとしなければ、将来の健康被害をいくら本人に訴えたところで何の効果もなく、ただただ本人たちを怖がらせるだけだろう。

日本の女の子はやせすぎぐらいじゃないと、かわいくも、きれいにもなれない。好きな服も着られない。
 
少し大げさかもしれないけど、今の日本にはこういう現実があることを私たちは忘れてはいけないと思う。外見より内面がだいじとか、そういう建前を言わないでほしい。

大人ばかりでなく、小学生もやせたいと思う社会。
中学生に向けファッション雑誌にダイエット特集が組まれる社会。
そして48kgの峯岸さんより、43kgの峯岸さんを素敵とほめたたえる社会。

私はそんな社会がとても怖い。




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2015年12月17日木曜日

手帳と継続の秘訣

スケジュールを何で管理するかでここ数年迷い続けた私がたどり着いた手帳がNOLTY 1392。Google calender、スマホのアプリ、はたまた手作りなど、どれをやっても飽きてしまい、「私は根気のないだめ人間?」と、軽く自己肯定感を下げたりしていたのだが、この手帳は3年目に突入した。私の中ではこれは結構なキセキである。

続いた理由は意外なとろこにあり、手帳の右下の切り取り線。
一週間終わるごとにこれを切り取っていくので、すぐに今週のページが開けて合理的。

でも続いた理由はそこじゃなくて、この切り取り線が与えるやりきった感。1週間終わるたびに切り取ることで、なんかたいそうなことをした気がする。(実際はたいそうなことは何もない。)もはやラジオ体操のハンコ状態である。(「そんなにあなたはハンコが欲しいの?」なんて間違っても聞いてはならないのである。)

一つのことを続ける人が苦手な人にはちょっと勧めてみたい手帳であることは間違いない。


NOLTY1392

2015年11月10日火曜日

会話の死

スマートフォンが生まれる前、私たちは目線を合わせ、言葉を交わす以外に選択がなかった。
しかしその時代はすでに過ぎさった。

今私たちは、スマホの画面に目を落とすことで、言葉を交わすよりもずっと重要なことをしている「ふり」をすることができる。

これはもはや「会話の死」に他ならない。それは生きる上での苦痛をさらに増やしているだけのように私には感じられる。

Before mobile phones were invented, people would have had no choice but to interact. However, that is no longer necessary as we can all now “pretend” we are doing something “important” on our devices rather than think of something to say. This is killing conversation. I believe it’s increasing social pain. (http://www.boredpanda.com/the-death-of-conversation/

2015年6月18日木曜日

ロボットの人類学―20世紀日本の機械と人間 by 久保明教

昨年から今年は実は文化人類学の出版ブーム。若手の人類学者が次々に本を出版している。その中の一冊の本著は、文化人類学の最先端の理論を用いてロボットを語る。

そこで語られるのは、鉄腕アトムから社会現象ともなったエヴァンゲリオンまでのロボットアニメ、さらには2014年に修理窓口が閉鎖し、愛犬の死を悲しむ飼い主がいることが報じられたアイボまでさまざま。ロボット好きであれば、人類学者の独特なロボットへのまなざしそのものが面白いのではないだろうか。

それはさておき、本書の主旨をざっくりまとめると、人間とロボットの違い、あるいは欧米のロボットと日本のロボットの違いといった、2つの対立項の比較ではなく、いっけん対立しているようにみえる2つの項がいかに交じり合い、お互いに影響し合い、そしてその結果それぞれがいかに変容しているのかをロボットを通じてとらえる試みとなるのではないかと思う。

グローバル化が進む現在、私たちは嫌がおうなしに、自分たちと他者との違いを意識せざるを得ない時代にあり、それはしばしばヘイトクレームといった、他者を徹底的に貶めることにより、自分たちの絶対的な優越性を誇示しようというような行動に結びつくこともある。

しかし本著の視点を用いれば、このような対立を自明のものととらえ、正しいのはどちらかといった視点から語るのは問題の表層しか見ていないということになるだろう。なぜなら実際は、その両者は密接に結び付きあい、交じり合い、影響し合い、お互いがお互いを変容させ続けているからである。

筆者はおわりにこう述べている。 

あなたが熱狂的に応援するワールドカップ日本代表のスポーツエリートとしての思考や身体のあり方よりも、理解できない言葉で叫ぶ異国のサポーターの思考や身体の方があなた自身のそれに近いかもしれない(p239)

もっとも異質なものは異国にあるのではなく隣にあり、もっとも同質性の高いものは隣にはなく遠く離れた異国にあるかもしれない。このまなざしは、IT技術によって複雑に結び付けられた世界に生きる私たちの生のありようを端的に示しているとは言えないだろうか。


本著はロボットの話しだが、ここで展開される視点は世界のさまざまな現象を捉える際に零れ落ちてしまいがちな、しかし現象の本質にある動態を把握するためにきわめて有効であると思われる。
 

2015年4月1日水曜日

AIの衝撃 小林雅一

AIの歴史と現在をわかりやすく解説している新書

AIの進化に当たって脳科学が深くかかわっており、脳の解明がAIの進化に直結すると現在では考えられているらしい、というところが興味深い。

文化人類学的に見ると「意味を見出す、作り出す」というところまで、入らないとAIは人間の本質には届かない感じもする。

しかしこの書のいうようにAIロボットが私たちの生活空間にまで入り込み、その情報がGoogleといった企業に事細かに収集されるかと思うと恐ろしい。ペッパー君の目がとらえたものもそのままデータセンターに送られるのである。

でもFacebookとかLINEとかで自分の情報をばんばん開示してる人からしたら、そんなことたいしたことじゃないのかな。便利とは何物にも代えがたいものらしい。

2015年3月28日土曜日

機械との競争 エリック ブルニョルフソン/ アンドリュー マカフィー

技術革新は雇用を奪うのか?

著者の結論は、いまは奪っているがそれは技術革新のスピードに人間が追いつかないだけで、政治・教育・経済のあり方を変えればそれには対応できるという楽観的なもの。

しかしこれを読む限り、人間の二極化はますます進み、それに歯止めは効かないのではないかという印象が強い。

現代社会を生きる人間にとって幸せとは何かを逆説的に考えるための良書

ところで東京オリンピックに備えて導入される山手線の新車両には中吊り広告がなく、すべてディスプレイ広告に切り替わるそう。つまり中吊り広告を入れ替えしていた人の仕事がなくなっていくわけだ。昼間の中央線に乗ったとき、その入れ替えの速さに驚いたことがあるが、そういう風景も少しづつなくなっていくということ。