登壇者に共通していたのは、「人間の身体をその外側の世界と分離して考えることなんてできないよ」、という点。
石倉さんの人間には「内臓」に加えて、「外臓」があるという話、藤原さんの「イカの踊り食いをした場合、そのイカはいつ自分になるのか」といういっけんすっとんきょうな質問が、食べるという行為の本質を突く。
私はいわゆる「摂食障害」という病気にかかった人たちの調査を10年以上してきた。その人たちは概してとても勉強熱心で、いろいろな専門書を読んでいるけど、たいていそれは医学や心理学、栄養学の観点から書かれたもので、こういう形の視点を聞くことはほぼないといってよい。
ふつうに食べられなくなった人たちは、人文・社会科学の身体や食べ物のとらえ方を学ぶことで活路が見いだせるのでは、と思う時がしばしばある。なぜならそこにはそれまでにふれたことのない、身体や食べ物のとらえ方があるはずだから。