大学教員を始めてから、「難しい学生とは距離を取りなさい」「専門家に任せなさい」というアドバイスを、経験のある先輩方から何度ももらった。それはそれで納得がいくところもありつつ、同時に強い違和感も抱いていた。
『大丈夫、死ぬには及ばない―今大学生に何が起きているのか』 稲垣諭著/学芸みらい社 |
「距離をとること」、「専門家に任せること」、それが教員のあるべき姿なのだろうか。私は、「難しくない学生」だけと向き合うべきなのだろうか。
授業が増えれば増えるほど、教員にとっての学生は、どうしてもone of themになってしまう。だから諸先輩方の言っていることもわからなくはなかったし、自分に「難しい学生」と向き合うだけの「スキル」と呼ばれるものがある自信もなかった。
(その「スキル」とやらが何かはよくわからないけれど)
『大丈夫、死ぬには及ばない』の読了後に一種のすがすがしさを覚えたのは、この本が、私が抱いていた違和感を肯定してくれたからなような気もする。
若者に日々ふれあう仕事をする人たちに、ぜひ目を通してほしい。
共同通信書評 |