2016年11月16日水曜日

東田直樹 『飛び跳ねる思考』


人の目に映る自分の姿を想像しただけで、
この世から消えてしまいたい気分になります。
僕が抱えている心の聞は、どんな魔法をかけても消えません。
人は誰でも、心に傷を抱えながら生きているのではないでしょうか。
その傷が、すぐに癒える人もいれば、
いつまでも消えることなく残る人もいます。
そして、僕のように暗閣の中で悲鳴を上げ続ける人もいるのです。 
・・・ 
苦しくてたまらなくなると、空を見上げます。
目に飛び込んでくるのは、抜けるような青空と白い雲です。
見ている僕はひとりぼっちなのに、
世界中の人とつながっている気分になります。
自然はどんな時も、人々に平等です。
そのことが僕の心を慰めてくれるのです。
お日様は頭上を照らし続け、風は四六時中、僕の隣を通り抜けます。
木々の緑は美しく、空気は澄んでいます。
こんな自然の中でなら、ありのままでいられるのです。
つらい気持ちは、どうしようもありませんが、
ひとりではないと思える瞬間が、僕を支えてくれます。


東田直樹 『飛び跳ねる思考』


大ベストセラー『僕が飛び跳ねる理由』を書いた重度の自閉症者、東田直樹さんの著書から。彼の文章は心にまっすぐやさしく届いてきます。たぶんそれは彼がまっすぐやさしく文章を書いているからなのでしょう。

そんな文章を書くことは、自分の心をそのまま出すことなので、簡単そうでなかなかできないことなんだと私は思います。

会話のできない自閉症の僕が考えていること